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日本構造デザイン賞賞牌

2023年 第18回日本構造デザイン賞


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総合選評
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 お陰様で、日本構造でデザイン賞も今年で18回を数えるまでとなりました。3年にわたるコロナウイルス禍もようやく落ち着き、今年は建築作品も本来あるべき人の賑わいを得て視察できるようになったことを嬉しく思います。
 「アトリエ的な活動をする個人」を対象としていた本賞会員も、近年は組織事務所や大手建設会社に所属される方々が加わり、正会員も60名と日本の「構造家」の会として充実した陣容となってきました。また倶楽部を創設された初代層の先生方が徐々に引退または逝去され、倶楽部の主導権が40〜50歳代の次世代層に移りつつあることも大きな流れとなっています。
 今年は、9人の応募者がありました。応募者所属内訳はアトリエ設計事務所が5名、大手総合設計事務所が2名、施工会社設計部が2名となっています。応募作品の用途は事務所3件、展示館1件、教育施設1件、公共施設1件、住宅・寮3件、構造形式は鉄骨構造系2件、RC系2件、木質系2件、ハイブリッド系3件となっています。ハイブリッド系は鉄骨と木材、RCと木材、または3者を組み合わせたもので、素材の特長を上手に活かして組み合わせた作品が多く見られました。今年は動画投稿は1件のみでした。
 審査は昨年と同様、まずそれぞれの審査員が応募資料を事前に読み込んだ上で、それぞれの作品ごとに意見を述べ合い、ひとり最大3票ずつの無記名投票を行った結果、2名の候補者の票が他応募より抜きん出ており、今年はすんなりと2名の候補者を決定することができました。選ばれたのは、名和研二さん(なわけんジム)の「KITOKI」と、平岩良之さん(平岩構造計画)の「シェルターインクルーシブプレイス コパル」で、ともにアトリエ構造設計事務所の主催者となります。
 議論の中には応募作品だけではなく、過去の実績や個人の考え方なども参考にしました。また、候補作品に対しほぼ全審査員が現地審査に参加し、作品を実際に体感し設計者のお話を伺い質疑応答することで、候補者や候補作品の質を確認させていたただきました。
 今回選ばれた名和研二さんは、昨年惜しくも選に漏れましたが、連続応募の末の受賞となりました。したがって、今回選に漏れた方もぜひ、今後構造家倶楽部に加わっていただきたく、引き続きのご応募を期待したいと思います。
 大規模作品では組織的な作業が要求されることも多く、さまざまな与条件も加わって個性を感じさせられる構造デザインを実現するための難易度も上がるものと考えられます。このような作品については現場視察にて応募者の作品に関する考え方や実現の過程を直接伺うことで、その正当性を確認していきたいと考えています。
 松井源吾特別賞には、構造設計者の活動を理解し支えて下さってきた建築家、研究者、メーカーエンジニアの方々に感謝と尊敬の念を込めてお贈りしてまいりましたが、今年はガラスを中心としたファサードエンジニアリングのフロンティアを永らく開拓し続けてこられた、旭ビルウォールの伊勢谷三郎氏にお贈りすることとしました。
 今後とも日本構造デザイン賞へのご応募、日本構造家倶楽部へのお力添えをどうぞよろしくお願いいたします。

竹内 徹(選考委員長・構造家)


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2023年 第18回日本構造デザイン賞
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名和 研二(なわ・けんじ)/個性的な構造デザインによる一連の作品群  経歴と受賞作品 
平岩 良之(ひらいわ・よしゆき)/シェルターインクルーシブプレイス コパル(山形市南部児童遊戯施設)  経歴と受賞作品 


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2023年 第18回日本構造デザイン賞 松井源吾特別賞
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伊勢谷 三郎(いせや・さぶろう)
ファサード・エンジニアリングを通じた建築および構造デザインへの顕著な貢献
 経歴と業績 


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選考委員
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竹内 徹(委員長・構造家)
福島 加津也(建築家)重松 象平(建築家)アラン・バーデン(構造家)原田 公明(構造家)岡村 仁(構造家)大野 博史(構造家)