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村上 博昭(むらかみ・ひろあき)
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経歴(受賞時)
1973年 愛媛県生まれ
1996年 東京都市大学工学部建築学科卒業
1998年 東京工業大学大学院総合理工学研究科修士課程修了
1998年 佐々木睦朗構造計画研究所入社
2007年 日建設計入社
現在 構造設計主管
主な作品
2008年 國學院大學学術メディアセンター
2009年 汐留浜離宮ビル
2012年 東洋大学125周年記念研究棟
2012年 立教大学ロイドホール(18号館)
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國學院大學3号館
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外観。 ▶
國學院大學3号館
所在地 東京都渋谷区/
主要用途 大学/
竣工 2009年/
発注者 学校法人國學院大學/
設計 株式会社日建設計/
施工 鹿島建設株式会社/
敷地面積 12623.99m2/
建築面積 1605.63m2/
延床面積 7159.43m2/
階数 地下1階、地上5階/
構造 鉄筋コンクリート造/
工期 2008年7月〜2009年8月/
撮影 エスエス東京
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選考評
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國學院大学3号館はPCの存在が奥ゆかしい感じがするところが魅力に思えた。一般的にPCというと大スパンの可能性を追求したり、造形の自由度や精度の高さを競ったりし、意匠的にはその存在感を余すことなくアピールすることが多いが、本プロジェクトではそうした「らしさ」が見られない。そもそも構造は壁構造や開口部まわりの壁柱、庇兼用の梁などにみられるように空間を構成するための要素へと還元されており、その存在感を最小限にする、あるいは気に留めないほどに当たり前にするように計画されている。PC製の梁が既製品でよいと判断されたのは、わざわざ利用者の意識が向かないようにするための配慮かと思われ、構造の意匠計画として非常に的確ではないかと感じた。
なお、同じ作者による立教大学ロイドホール「18号館」と比較してみるとその違いは明らかだろう。立教大学では、フレキシブルな大空間を確保するために四つ角に設けたコアに耐震要素を集約させ、構造は、スパンの大きさをアピールするかのようにシンボリックとも言えるような存在感を醸し出しており、いわゆるPCらしい意匠/構造計画となっている。同じPCという課題が与えられながらも、自在にその意味をコントロールする余裕のようなものが、両者の比較から感じられる。國學院大学3号館のようなさりげない構造計画は、この余裕から生まれたのだろうか。
乾 久美子(選考委員・建築家)
この施設は國學院大學の8年間にわたる全ての建替えプロジェクトの設計監理を担った日建設計が締めくくった最後の建物である。構造設計者はプロジェクトに最初から従事し、この施設の設計監理をまとめた。組織が期間中に培った構造システムの構想から技術に関する知見の蓄積を基礎に、構造設計者は新たな視点から独自の構造システムを提案し実現している。2列のチャンネル型平面形状の構造壁が廊下を挟んで配置するそれまでの構造システムを、この施設ではH型平面形状の構造壁によるシステムに換えている。これによってプランニングに柔軟性を与えている。H型のウェブに相当するRC構造壁からヤジロベー的に片持ちスラブを張り出し、これと外部の柱との間のスパン11mに、既製品で安価に入手可能なT字型プレキャスト床版を掛け渡している。またこの床構造は照明・空調システムに利用されている。ファサードを構成する柱・梁は既往の断面を踏襲している。
このように構造設計者が自らの役割に真摯に向き合い、過去に自社が培ってきた技術を活用しつつ、独自に新たな技術を実現してきた点は、構造デザイン賞に値するものである。
新谷 眞人(選考委員・構造家)