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日本構造デザイン賞賞牌

2013年 第8回日本構造デザイン賞


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総合選考評
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 構造家という専門的職業が建築界では定着しつつある。一般の辞書には未だ「構造家」は見られないが、インターネットでは具体的に「構造エンジニアの中で特に作家性、作品性のある者を指す日本独自の呼称」などとある。構造設計の重要性が高まるにつれ、建築雑誌でも構造家の名前が建築家と併記されるようになった。建築学会賞も構造家が共同受賞する例が近年増えている。
 「松井源吾賞」を継承し、2006年に開始した「日本構造デザイン賞」も本年で8回目を迎える。本年の選考委員は、日本構造家倶楽部から選出された梅沢良三、新谷眞人、陶器浩一、小西泰孝の4名に、建築家の手塚貴晴、乾久美子の両氏が加わり総勢6名で、6月18日(火)に全員出席の下で選考が行なわれた。本年は自薦8名の応募あり、作品規模(延床面積)は100〜20,000m2と幅広く、構造種別もS造、RC造、SRC造、PC造、木造、またこれらの併用構造も多く見られ、それぞれの素材や構造特性を生かし創意工夫がなされた作品が集まった。慎重な審議と、無記名による2回の投票を行った結果、本年の「日本構造デザイン賞」に満田衛資、村上博昭の両氏を選出し、現地視察を経て、7月19 日(金)に結果発表を行った。
 満田衛資氏の「大阪府立春日丘高等学校創立100周年記念会館」は、まことに小さな作品であるが、力学的原理を素直に用い、建築表現を高めることに著しい貢献が見られ授賞となった。満田衛資氏は昨年度も、建築のリノベーション作品で、構造設計に独自性のある技術を用いた優れた建築作品を応募されており今回の授賞のきっかけとなった。
 村上博昭氏の「國學院大學3号館」は、キャンパス内の他の建物群と意匠的調和を保ちつつ、廉価な既製PC板を素材として巧みに生かすなど、独自のディテールに創意工夫を凝らし、構造を建築的に表現する事に成功している。
 この度受賞した両氏も含め、複数の作品による応募者は全8名の内6名であった。複数作品による場合は、それらの作品を総合的に評価し、人を中心に選ぶ方法をとるか、今回のように、複数応募作品のうち、最も評価が高かった作品ひとつを授賞作品に選定するか、の2通り考えられる。前者の場合は業績に重点が、後者の場合は作品に重点がおかれることになるが、いずれの場合もそれぞれが優れた建築作品である事、構造設計者の独自性のある技術が顕著であることなどが審査の基本となる。このたびも日本構造デザイン賞の応募要項に照らし、厳正な審査を経て授賞作品が選定された。
 なお、「日本構造デザイン賞松井源吾特別賞」は、日本構造家倶楽部から推薦された大森博司氏に全会一致で決定した。選考評は別欄にて詳しく記述する。

梅沢 良三(選考委員長・構造家)小西 泰孝(選考委員・構造家)

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2013年 第8回日本構造デザイン賞
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満田 衛資(みつだ・えいすけ)/大阪府立春日丘高等学校創立100周年記念会館  経歴と受賞作品・選考評 
村上 博昭(むらかみ・ひろあき)/國學院大學3号館  経歴と受賞作品・選考評 

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2013年 第8回日本構造デザイン賞 松井源吾特別賞
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大森 博司(おおもり・ひろし) /構造部材の形態による建築デザインへの貢献   経歴と業績・選考評  

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選考委員
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手塚 貴晴(建築家)乾 久美子(建築家)梅沢 良三(選考委員長・構造家)新谷 眞人(構造家)陶器 浩一(構造家)小西 泰孝(構造家)