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日本構造デザイン賞賞牌

2022年 第17回日本構造デザイン賞


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総合選評
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 日本構造デザイン賞は今年で17回を数えるまでとなりました。15回を数えた前身の松井源吾賞と合わせて、32回目となります。今年より選考委員長の責を中田捷夫先生より引継ぎ、身の引き締まる思いでおります。
 「アトリエ的な活動をする個人」を対象としていた本賞会員も、近年は組織事務所や大手建設会社に所属される方々が加わり、正会員も60名と日本の「構造家」の会として充実した陣容となってきたことを感じます。「構造家」の定義にはいろいろなご意見があると思いますが、個人的には構造設計に対する「哲学」、「志」があり、その作品に「作家性」がある構造設計技術者だと思っています。
 今回より審査員にはより国際的な視点も加えるべく、NYでご活躍の建築家、重松象平さん、UKと日本で活躍する構造家、アラン・バーデンさんに加え、建築家の福島加津也さん、構造家の原田公明さん、岡村仁さん、大野博史さんと40-50代の脂の乗り切った方々をお迎えしました。またオンライン応募に対応して応募資料をデジタル化し、動画データも受け付けることとしました。結果、11件の応募作品があり、4名の方に動画を含む応募資料を提出いただきました。応募者は6名がアトリエ系事務所、2名が組織事務所、3名が大手建設会社に所属する方々でした。応募作品の用途は、事務所系6件、美術館1件、教育施設1件、住宅系3件、構造形式は、鉄骨構造系5件、RC系1件、木質系3件、ハイブリッド系2件といったところでしょうか。さまざまな素材を組み合わせた作品も多く、耐震改修系の作品もいくつか見られました。
 審査はまずそれぞれの審査員が応募資料を事前に読み込んだ上で、それぞれの作品ごとに意見を述べ合い、ひとり最大5票ずつの投票を行った結果、5名の候補者を選出しました。この時点での票のぶれはほとんどありませんでした。その後が大変で、何度も議論を尽くし再投票を行っても票が割れる状況となりましたが、僅差で江坂佳賢さんと黒岩裕樹さんを選ばせていただきました。議論の中には応募作品だけではなく、過去の実績や個人の考え方なども参考にしました。最終選考から漏れた方には岡山俊介さん、北川昌尚さん、名和研二さんがおり、これらの方々を含めてぜひ今後構造家倶楽部に加わっていただきたく、引き続きのご応募を期待したいと思います。大型の作品では組織的な作業が要求されることも多く、さまざまな与条件も加わって、個性を感じさせられるような構造デザインを実現するための難易度も上がると考えられます。このような作品については現場視察にて応募者の作品に関する考え方や実現の過程を直接うかがうことで、その正当性を確認していきたいと考えております。
 松井源吾特別賞には、構造設計者の活動を理解し支えて下さってきた建築家、研究者、メーカーエンジニアの方々に感謝と尊敬の念を込めてお贈りしてまいりましたが、今年は空間構造の研究を長らく国内外で展開し、かつ自らそれを構造設計に実践されてきた東京大学の川口健一先生にお贈りすることといたしました。
 今後とも日本構造デザイン賞へのご応募、日本構造家倶楽部へのお力添えをどうぞよろしくお願いいたします。

竹内 徹(選考委員長・構造家)

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2022年 第17回日本構造デザイン賞
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江坂 佳賢(えさか・よしさと)/ヤマト港南ビル  経歴と受賞作品・選考評 
黒岩 裕樹(くろいわ・ゆうき)/神水公衆浴場  経歴と受賞作品・選考評 


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2022年 第17回日本構造デザイン賞 松井源吾特別賞
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川口 健一(かわぐち・けんいち)
空間構造デザインの学術と実践および国際活動
 経歴と業績・選考評 


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選考委員
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竹内 徹(委員長・構造家)
福島 加津也(建築家)重松 象平(建築家)アラン・バーデン(構造家)原田 公明(構造家)岡村 仁(構造家)大野 博史(構造家)