2017年第12回
日本構造デザイン賞

総合選考評

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萩生田 秀之 (はぎうだ・ひでゆき)
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岡村 仁

経歴(受賞時)
1977年 東京都生まれ
2000年 明治大学理工学部建築学科卒業
2002年 明治大学大学院博士前期課程建築学専攻修了
2003年 空間工学研究所
2010年 KAP


主な作品
堀川運河木橋「夢見橋」(2007)
なるとう子ども園(2013)
安曇野市新本庁舎(2014)
大森ロッヂ 運ぶ家(2015)
東京クラシッククラブ(2016)

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喜多村 淳(きたむら・じゅん)
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桐野 康則

経歴(受賞時)
1971年 東京都生まれ
1994年 横浜国立大学工学部建設学科建築学コース卒業
1996年 横浜国立大学大学院工学研究科計画建設学専攻修士課程(博士前期課程)修了
1996年 太陽工業株式会社

主な作品
田園都市線あざみ野駅西口庇(東京急行電鉄、大建設計、2006)
ルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァ(イソザキ・アオキ アンド アソシエイツ、松島2013、仙台2014、福島2015、東京2017)
大安場史跡公園砂場上屋(ライフ計画事務所、2015)
大島病院車寄せ棟(永田建築事務所、2016)

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新豊洲ブリリアランニングスタジアム
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内観。撮影 ナカサアンドパートナーズ

新豊洲ブリリアランニングスタジアム
所在地 東京都江東区/主要用途 スポーツ練習場/発注者 太陽工業/設計 E.P.A環境変換装置建築研究所/施工 中央建設、太陽工業/敷地面積 4,846㎡/ 建築面積 1,746㎡/延床面積 1,714㎡/階数 地上1階/構造 RC造一部鉄骨造、木造/工期 2016年5月〜2016年11月/撮影 ナカサアンドパートナーズ

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選考評
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 普通の建築とはかなり雰囲気が異なるこのプロジェクトは、集成材+鉄骨アーチフレームとETFE膜とで成立しており、日本におけるETFE膜建築の国内普及へ向けての大きな第一歩となった革新的な建築である。内部は、湾曲集成材の作り出すパターンと膜から入る拡散光とで非常に美しく明るい空間になっている。また、考え抜かれたジョイント金物によって、簡単に組み立て、分解が可能なシステムとなっており、将来の移転に対しても非常に明快な解答となっている。木とETFEの素材、そしてモノづくりに徹底的にこだわった結果生み出された、高度で美しい空間性は、喜多村氏、萩生田氏双方のどちらも欠けても成立し得なかったことは明らかである。

赤松 佳珠子(建築家)

 海外ではスタジアムや空港などでよく見かけるクッションタイプのETFE膜だが、日本では法規制のハードルがあり、なかなか普及のスタートラインに立てずにいた。「新豊洲ブリリアランニングスタジアム」が、法改正後の最初期のプロジェクトとして、一般確認申請が可能となる告示化実現に果たした役割は大きい。しかし、構造デザイン賞では、プロジェクトの作品性と、それを実現したふたりの構造家を評価の対象とした。
 細部にまで構造設計者の意思が貫かれた湾曲集成材による木構造の、軽やかでありながらユニークな存在感と、それを引き立たせるETFEクッションの浮遊感の対比が、清々しい構造美の空間をつくり出している。創意に溢れるふたりの構造家のコラボレーションが高く評価された。

金田 充弘(構造家)

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