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岡村 仁(おかむら・さとし)
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経歴(受賞時)
1964年 埼玉県生まれ
1991年 千葉大学工学部建築学科卒業後、(株)構造設計集団〈SDG〉入社
1998年 Dewhurst Macfarlane and Partners Ltd. 入社
1999年 空間工学研究所設立
2010年 株式会社KAP設立
http://kapstructure.wix.com/engineers
主な作品
2000年 倫理研究所・新富士研修所
2005年 島根県芸術文化センター
2006年 さつき幼稚園
2007年 堀川運河木橋「夢見橋」
2009年 日比谷花壇日比谷公園店
2009年 虎屋茶寮京都一条店
2012年 渋谷駅東口二階デッキ
2013年 金谷幼稚園
2014年 太田川大橋
2015年 静岡県草薙総合運動場体育館「このはなアリーナ」
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桐野 康則(きりの・やすのり)
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経歴(受賞時)
1970年 鹿児島県生まれ
1994年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了後、(株)構造設計集団〈SDG〉入社
2002年 桐野建築構造設計設立
2010年 株式会社KAP設立
http://kapstructure.wix.com/engineers
主な作品
2005年 エムビル
2006年 星のや軽井沢人道橋
2009年 幕張メッセ連絡通路( 共同設計者 佐藤孝浩)
2009年 ハルニレテラス
2010年 川口市並木公民館
2014年 亀甲新集合住宅
2015年 星のや富士
2015年 静岡県草薙総合運動場体育館「このはなアリーナ」
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静岡県草薙総合運動場体育館「このはなアリーナ」
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静岡県草薙総合運動場体育館「このはなアリーナ」
所在地 静岡県静岡市 / 主要用途 観覧場 / 竣工 2015年 / 発注者 静岡県 / 設計 (建築)内藤廣建築設計事務所 (構造)KAP (設備)森村設計
/ 施工 鹿島・木内・鈴与特定建設工事共同企業体 / 敷地面積 約200,000m2 / 延床面積 13,509m2 / 階数 地上2階 地下1階
/ 構造 RC造・鉄骨造・木造 / 工期 (設計)2011年3月〜2012年6月 (施工)2013年1月〜2015年4月 / 撮影 内藤廣建築設計事務所
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選考評
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第11回日本構造デザイン賞の授賞対象となった岡村仁氏と桐野康則氏による静岡県草薙総合運動場体育館「このはなアリーナ」は、
今回の全応募作の中でもひときわ群を抜いた作品だったと思う。大きな架構で、堂々としていて、列柱が並び、そこに人びとが入ってくる。
原始的な建築のありようを感じさせる空間だ。木造あり、コンクリート造あり、鉄骨トラスありという混構造で、そのすべてを露出しながら、
複雑さや手続きの多さを感じさせない、建造物としての美しさと必然性があった。難しい建築形状、複雑で難易度の高い構造が、
きわめてシンプルにでき上がっていた。アリーナに立ったときに感じる空間の大きさ、架構として閉じつつ全周が開かれる開放感など、随所で建築の力を感じた。
西沢 立衛(建築家)
「このはなアリーナ」は、75m×105mの楕円平面を持つ、木造による大空間建築である。静岡県が良質なスギの産地であることから、
「県産木材の活用」がコンペの提案項目であったという。この規模の大空間木造は、通常かなり力強い架構となるが、
「このはなアリーナ」では360mm×600mmの集成材256本が楕円の曲線に沿って柔らかくうねる曲面を形成し、木の架構が庇の上に浮いているような軽快な印象を与える。
仕上材かと思うほど表面の美しい集成材は、すべて同一長に統一され、架構全体が明快でシンプルな構成なため、構造も軽々と成立しているような印象を与えるが、
そのシンプルさを実現するために、岡村さんと桐野さんのふたりは、さまざまな工夫を凝らしている。
大空間と木造という与件を両立させるために、木材の裏側に偏心した鉄骨ブレースを入れて水平力に対する剛性を付与し、柱頭での中間階免震により地震力を低減し、
下屋根のスラストを受ける幅広のRC造の庇にポストテンションを導入するなど、これまで培ってきた知見を適材適所で総動員して解決されたことがよくわかる。
さまざまな工夫や技術力がさりげなく効き、全体としての素晴らしい建築のあり様に影響していることは、日本の伝統的な木造建築に通じるものがあるように思った。
金田 充弘(構造家)